前回。
友達がインフルエンザになり、
なぜか一人で韓国へ行くことになった私。
韓国に到着して早々、
知らないツアーのバスに乗り込み、
本来乗るはずだったツアーの皆さんを、
空港で1時間以上待たせた。
普通なら、
ここで少し慎重になると思う。
私はならなかった。
むしろ、
「ひとり韓国、楽しいじゃん」
くらいに思っていた。
人はそんなに簡単には学ばない。
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ひとり韓国を満喫する
その後は、
一人で買い物したり、
ごはんを食べたり、
明洞をウロウロしたり。
普通に楽しかった。
一人でも全然平気。
なんだ。
海外ひとり旅、
余裕じゃん。
そして夜。
私はエステに行った。
場所は明洞のど真ん中。
行くときの明洞は、
とにかく明るかった。
看板ピカピカ。
お店ギラギラ。
人もいっぱい。
夜なのに、
「まだまだこれからですけど?」
みたいな顔をしている。
ホテルもそんなに遠くない。
帰りも歩けばいい。
何の問題もない。
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店員さんは知っていた
エステが終わった。
かなり遅い時間だった。
帰ろうとすると、
店員さんが言った。
「タクシーで帰ったほうがいいよ」
でも私は、
ホテルまで近いし、
来るときもあんなに明るかったし、
歩いて帰れると思った。
「大丈夫。歩いて帰る」
そう言って店を出た。
ちなみにこの女、
その日の昼間、
知らないツアーのバスに乗っている。
それでもまだ、
自分の判断力を信じている。
すごい。
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明洞、閉店していた
外に出た。
…………。
暗い。
え?
暗い。
めちゃくちゃ暗い。
さっきまで、
あんなにギラギラしていた明洞が、
真っ暗。
店も閉まってる。
看板も消えてる。
人もいない。
さっきまでの明洞、
どこ行った?
あんなに、
「夜はこれから!」
みたいな顔してたじゃん。
普通に寝てる。
しかも、
ガッツリ寝てる。
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これはヤバい
急に怖くなった。
ここは海外。
夜中。
女一人。
しかも周りは真っ暗。
もし誰かに襲われたらどうしよう。
怖い。
非常に怖い。
どうする。
走るか?
でも、
ただ走っている女なんて、
追いかけられたら終わりである。
そこで私は考えた。
そして、
ものすごい防犯対策を思いついた。
「そうだ。」
「こっちがヤバい奴になればいい。」
襲う側だって、
普通の女なら襲うかもしれない。
でも、
夜中に奇声を上げながら走っている女だったらどうだ。
たぶん、
関わりたくない。
よし。
それでいこう。
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奇声を上げながら走る
私は走った。
夜中の明洞を。
奇声を上げながら。
何と言っていたのかは覚えていない。
「ウワァァァァ!」
だったかもしれないし、
「ああああああ!」
だったかもしれない。
とにかく、
全身で、
「私には近づかないほうがいいですよ」
を表現しながら走った。
夜中の韓国で、
日本人女性、
30歳。
一人。
奇声。
疾走。
怖いのは、
私である。
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作戦成功
誰も近づいてこない。
よし。
効いている。
この作戦、
いける。
私はさらに走った。
とにかくホテルへ。
走る。
奇声。
走る。
奇声。
そして、
しばらくして気づいた。
…………。
ここどこ?
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迷子になった
襲われないことに集中しすぎて、
道がわからなくなった。
ホテルがどっちなのかも、
わからない。
海外。
深夜。
女一人。
真っ暗。
そこへ新たに、
「迷子」
が追加された。
状況が、
どんどん悪くなっている。
しかも私は、
さっきまで奇声を上げて走っていた。
もう、
誰かに助けを求める側なのか、
誰かから逃げられる側なのか、
よくわからない。
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結局、タクシー
とりあえず、
明るいところまで出よう。
私はなんとか、
人や灯りのある場所までたどり着いた。
そこで、
タクシーを拾った。
そして無事、
ホテルに帰った。
…………。
エステの店員さんの言葉を思い出した。
「タクシーで帰ったほうがいいよ」
はい。
最初から乗ればよかった。
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あれから約18年。
私は48歳になった。
そして今、
55歳になったら、
一人で海外を渡り歩こうとしている。
人は成長する。
私だって、
あの頃とは違う。
知らないバスには乗らない。
夜中に知らない街を一人で歩かない。
店員さんが、
「タクシーで帰れ」
と言ったら、
素直にタクシーに乗る。
ずいぶん大人になった。
ただし、
奇声作戦については、
今でも少しだけ、
有効だったんじゃないかと思っている。
だって、
誰にも襲われなかった。
ただ、
迷子になった。
55歳からの渡り鳥生活。
安全第一でいこうと思う。
たぶん。
大器晩成、らしい。
本当に大器晩成なのかは、また次回。


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